スキット: 教員がイヤな言葉 その3


院生「・・・以上です.今週はこれだけです.」 

教員(あれ?たったこれだけ?前のMTGから10日もあるのに何してたんだろ..)

  「そうか.なんか実験とかで難しいことあったた?」

院生「いや.得には・・・」 

教員(「これだけなの?」って言うべきかか,言うと責めてるようになっちゃうか.. でもやはりここはビシッと聞いたほうがいいのか..うー)←不満はつのっていく...



岡:先生,困ってますねぇ.

宮:これが一般企業なら楽々とこう言えます.「おまえ!給料もらってるんだぞ!もっと仕事しろ!」って.

岡:なるほど.ここは大学だし,学生さんは給料をもらって研究しているわけではないですしね.

宮:そうなんです.そこがスキットの後半で教員が学生に強くいうことをためらっている理由なんです.ちなみに,学生には”卒業する”という目標があります.しかし,昨今,卒業論文または修士論文の優劣で学生を落第させることは滅多にありません!なので,教員が学生にたいして「このままだと卒業できないぞ!」という言い方は効力を発揮しないのです.

岡:しっかり学んでいない人も卒業させちゃうってこと?それは問題なのでは?

宮:ドキ! もちろん,相当ひどい学生は落第なり留年なりはしてもらいます.でも,一般的に卒業する学生は就職が決まってますよね.落第させるとその会社に迷惑がかかるし,内定取り消しという超ダークな経歴が学生についてしまうのを避けてるんですよ.

岡:じゃあ,結局,学生はどういうモチベーションで研究をしているんでしょうか?

宮:そこが大事なんです.一般的には,大まかに3つあると考えられます.(2007イキイキ研究室増産プロジェクト調べ)

 1)先生が怖いから(研究しないと怒るから)
 2)とりあえず卒業したいから
 3)自分なりに研究に興味あるから,成し遂げたいから

 1)は外的,2)は義務的,3)は内的なモチベーションと区別されますね.

岡:なるほど.わかりやすいですね.ただ「先生と研究を進めていくのが楽しいから」というのはないんですね:笑

宮:痛いとこつきますね.ここで教員がもっているモチベーションも紹介しておきます.

 1)研究を進めたい!
 2)学生をきちんと育てて社会に出してあげたい!
 3)時間的ゆとりが欲しい!

岡:この先生と学生のモチベーションで関係しそうなのは,学生の3番と教員の2番ですね.

宮:そうです.そこを”突く”のです!ここで,今回のマジカル・メソッドは,

結果でなく努力を伝える

岡:それではスキットをご覧下さい.


院生「・・・週報は以上です.今週はこれだけなんです.実は,実験をしようとしたら足りない薬品や部品がありましてそれらの調達に思いの外時間をとられました.先生の口癖の”段取り八分”の言葉が身にしみました.. 

教員「そうか.ま,実験ってそんなものだ.今回それを学んだだけでもよしとして,次に活かしていこう.」



岡:すばらしいですね!結果ではなく努力を先生に評価してもらえるですね.

宮:そうですそうです.上述したように教員のモチベーションは研究を進めることほかに学生の成長もありますので,この失敗から自分が学んだことをきちんと伝えることで,教員はそっちのほうで満足してしまうのです.あと,別のバージョンも準備しましたのでご覧下さい.


院生「・・・週報は以上です.今週はこれだけなんです.実は,授業のレポート提出とかさなっちゃってそっちに時間を取られてました.そのレポート課題は□□□というもので,僕の研究とは全くことなることなんですけどやってみると,いろいろ学ぶことがありました.」 

教員「ほー!どんなこと気がついたの?」



岡:先生,食いついてますね!

宮:でしょ?結局,学生が育つことが目標なので,成長する場は,究極を言えば,研究でなくてもいいのです.バイトでもサークルでも.

岡:でももちろん先生としては,研究で育てたいのですよね.

宮:そうですそうです.研究も発展させたい!というモチベーションがあるのですからね.ただ注意して欲しいのは,上記の教員のモチベーションの優先順位は教員によって異なるという点です.

岡:とにかく研究の推進だ!という先生にはこの「努力」や「学んだこと」を伝えても意味がないということですね.

宮:はい.そこは学生のみなさんの分析が必要な部分かと思います.ただ,大学教員という人種には少なからず2番の部分もありますので,そこをうまくつくようにしてみてくださいね.

岡:教員も院生の努力している姿が見られて満足そうですし,院生も努力をただしく評価されて満足げですね.これがWin-Win関係ってやつですね.

宮:なお,さらに一つ上の”できるヤツ”なら,ダメな結果でもいい結果に見せるという高等テクニックを使うでしょう.これについてはまた後日.

岡:ぜひみなさん,使ってくださいね!



今回の学び For 教員

学生に注意するときって気を遣いますよね(私だけ?).ビシッときつく言うなどいろいろ方法はありますが,学生のモチベーションアップを第一に考えた場合は「なぜ?」という問いかけではなく「なにが?」と置き換えてみるのはどうでしょうか.
例)「なんでこの実験をやってないの?」→「実験をやるうえで何が問題だったの?」 なぜ?と問い詰めると学生は”いいわけ”を考えてしまします.これでは研究はいっこうに進展しません.何が障害だったの?ときくことで学生は”研究遂行における問題”を教員に話してくれます.そうするとそれの対処ができます.

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Last-modified: 2014-07-09 (水) 07:30:03 (3573d)