このページは,世界初の「合金における時効析出現象を取り扱うポータルサイト」として立ち上げました(勝手に:笑).管理者だけでなく,いろんな研究者がここにどんどん知見を集約していき,人類の金属学研究に貢献したいと思っています.といっても,ほとんど個人の覚え書になってます... 内容的には,金属材料工学,金属組織学の学部授業を受講した人程度の知識量を読み手として想定しています.本当にこれから析出相を勉強していくという方は,他の良書をごらんくださいませ(例:金属の相変態 榎本正人著).現在,一緒にトピックを作り上げていく人,募集中!
このサイトの目的
1.析出現象論 †
(以下,「金属物理」藤田英一著より)
1-1 析出全般のこと †
・時効析出処理とは,急冷などにより過飽和の状態をつくり,焼き戻しや時効処理などの熱処理によって微細な相分離組織を作り出すこと.
・やはりアルミの時効硬化の研究が最初(1907年A.Wilm)
・1937年,ギニエ(A.Guinier)とブレストン(G.D.Preston)が時効にともなう格子ひずみをX線回折斑点で観察.その結果,後に有名となるG.Pゾーン(溶質原子が集合した領域)が時効硬化の原因であることを突き詰めた.
・時効硬化を使った合金例:アルミ合金,鋼,銅ベリリウム合金,
・強度目的以外でも,強力磁石として有名なMK鋼(三島徳七が開発したから)はスピノーダル分解を使っている
・Siウエハーにおいても,単結晶引き上げ過程で導入された酸素がSiO2を析出させ,ゲッター作用を生じたり,適度な強度をSiに与えたりしている.
・合金の析出は過飽和相から過剰な溶質原子がある駆動力の下で移動会合することにより,小さな集合体をつくり,析出核を形成してい微少析出粒子となる現象であるため,どのように核が作られ,生成するのか?析出相の形はどうやってきまるのか?どこに核生成するのか?格子ひずみ,転位,点欠陥はどう関係しているのかはどは,金属物理学における命題である.
1-2 析出の駆動力 †
・化学ポテンシャルを下げることが駆動力といえる.ただしそれは相形成が大きなレベルで行われているという仮定であり,界面の形成エネルギーを考慮していない.
・そんなことをいいだすと,GPゾーンのように析出にともなうひずみを考慮する必要がある.
・本書ではそれについてこう書いてある「界面やひずみのエネルギーを図5.2(状態図のこと)で考慮するためには,単純には粒子サイズや粒子個数に依存する界面エネルギーやひずみを別に評価し,その分だけ析出物のエネルギーGを上昇させればよい」
現代のすべての核生成理論の原点はこの一文だと思う.元凶ともいえる.単に加算するだけでいいのか? ここにどうも納得がいっていない.複雑なのは分かる.本書によれば,内部エネルギー,規則化エネルギーなども考慮しなければいけないために,駆動力を正確に求めるのは困難,とある. From み
結局,この化学ポテンシャルを基軸とした析出の駆動力を論じる内容においてもっとも大事なのは,「作図で理解できる」という点にあると思う.そこが画期的であり,スマートだ.徹底的にやるのであれば,界面要素もひずみ要素もおなじ土俵で作図できればすばらしいのだが・・・ From み
1-3 核生成理論 †
ベッカーの理論 †
そうして,話しは核生成理論へとうつり,かの有名なベッカーの理論をもとにした,
ΔG=ー体積エネルギー・体積+界面エネルギー・界面積
これの登場となる.
・臨界核をもとめるには半径Rで微分すればよい.マルテンサイトの変態熱を300cal/molと仮定したり,界面エネルギーを0.3J/m3とかなり強引に仮定すると,臨界核は1nm,臨界エネルギーは2.8eVという値になる.
・しかし,本書でも示してあるようにこの値にはほとんど意味がない.実験的にもこれを追求することは無理であるから,理論計算にもまた意味はない.ただ,現状ではこのベッカーの理論がもっとも用いられている.
↑そこまで書いているのなら,逆にすがすがしい.というか,この核生成理論は例の原子拡散のアプローチでつめられないかな.. From み
核生成速度 †
・臨界核が現れる頻度はΔG*を得る確率,すなわち統計熱力学の基本の一つであるボルツマン因子によって与えられる.核生成の数は,N=N0exp(-ΔG*/kT).
・臨界核に原子が1個付着すればエネルギーが減少するようになる.逆に,臨界核から原子が1個逃げ去ればエネルギーが増加する.
・臨界核が収縮(消滅)せずに成長する確率Zが計算されていて,Zeldovich係数と呼ばれているが,これを1程度として考える.臨界核の隣に溶質原子がくる頻度と核の界面でその原子がジャンプして核に参加する頻度を合わせた物をfとすると,
f=nPνexp(-ΔGd/kT)
nは核の周りにくる原子数,νは原子振動数,Pは振動の中で析出に参加するのに有効な方向の割合(第7章拡散を参照).この場合,ΔGdはジャンプするときに超えなければならない活性化エネルギーであり,溶質原子が析出物に遠くから移動してくるのに必要な拡散の活性化エネルギーと考えればよい.
・析出核の形成速度(頻度)Iは,
I=Aexp[-(ΔG*+ΔGd)/kT)
頻度因子A=N0nPνを計算して核形成の頻度の絶対評価をするのは面倒であるが,実験的に重要であり,計算と併せやすいのは核の数,析出物の数と温度の関係である.
やはりここで重要なのは,核生成頻度は核の周りにくる原子数,原子振動数,そして,析出にかかわる方向が,ダイレクトにかかわるってことやね.これは大事.From み
・時効温度が変態温度のわずか下であれば,析出物は数少なく粗大となり,変態温度から離れる(この場合,下回る)にしたがって数は増え,ある温度では最も数が多く微細な組織が得られる.さらに時効温度を下げると析出物の数は再び減少する.これを図5.5に示す.
本書では、式に式を代入することで最終的にexpからなる式を導き出し、析出頻度に最大値が存在することを理論付けている! これって、かっこいいね。これが理論的な研究ってやつのストーリーなんだろう。学ぶわ。。 From み
核生成理論の問題点 †
・析出相は原子1個1個からの集合体と考えると、表面(界面)エネルギーの概念がどの大きさになったときから、つまり、どのくらいの集合になったときから成立するのか、あるいはそもそも実際に存在するのかがわからない。さらに、核に臨界サイズがあることをしめした実験は存在しない。
おー ここまで書くんですな.すごい.でも,実験で明らかにしていないことは認められないという主張(センス)はちょっと無しかな. From み
・そこで,この核生成のエネルギーの山を検討してみよう.表面エネルギーとは凝集体の表面原子が内部原子ほどには周囲と十分な結合をもたない(結合ボンドがあまっている=遊んでいる)からエネルギー的に浮き上がっている状態にあり,この表面の結合不足を内部に比べた余分なエネルギーとして仮定して図式化(図5.6)したものである.
・さまざまな前提条件や仮説を代入して計算した結果,臨界核はr=2aとなる.aは原子直径程度の大きさであるから,なんぼなんでも2aの寸法でエネルギーの山を論じるのはちょっと無しだろう.
・rをさらに小さくすると,内部の十分結合している原子は極端に減り,表面原子ばかりになるから界面エネルギーは上昇し,体積が増加することで相のエネルギーを下げる効果は薄れるためにΔGは山をつくるようになる.これがベッカーの主張.
・しかし,図のエネルギー関係に注目すると,表面原子といえども結合には加わっており,その欠損分が表面エネルギーなのであるから,上の形式をそのまま適用すると,rが小さいときには欠損分が全体分を超えてしまうという矛盾にいたる.
つまり,析出のrが小さくなると表面エネルギーの定義と矛盾がでてくるってことか..なら,その定義を変えたらいいのでは?? これって,前の金属学会で西谷先生が発表されていたことだよね.西谷先生と議論したいなぁ From み
・事実,界面エネルギーはそもそも全体エネルギーを増加させるようなわけでもなく,もちろん,下げる方向に向かうこともあるので,このベッカーのやりかたではrの小さいところではますます成り立たない.図5.6aでは,表面第二層の原子までが結合に変化を生じている様子を模式的に示してある.
・本書では,上記の記述の後,そもそも固体ー固体内での核生成なんだから,もっと複雑だ,とか,ひずみが重要な気がする,結合エネルギーを考えないといけない,などなど,ベッカーの理論のあいまいさを激しく指摘している.
核生における集合過程 †
難しい!本書のこの部分は難しくて理解不能.なので,最後の段落を記載しておく.
・析出核ができるまでの段階は上のようなエンブリオの消長の過程からできていて,核生成の途中のエネルギーの山は式6.34でしめすようないくつもの連立方程式中の進行の途中に集合しがたいところがあることを意味している.それは方程式の上では5.15式の右辺第一項よりも第二項のほうが優勢になる状態である.もしそれらの黄河均衡すれば核生成は停滞する.したがって,速度論的にはベッカー流のエネルギーの山があるかないかは結論できない.しかしエネルギーの障壁がなくとも速度の遅滞だけで書く生成過程が存在していると考えることも可能かもしれない.
不均一核生成 †
・不均一核生成とは,欠陥構造や濃度のゆらぎなど,ある偏った場所(=不均一な場所)に核生成が生じるというもの.実際,ほとんどの核生成は不均一核生成.
すなわち,濃度や欠陥構造,そして介在物を制御することで,核生成を制御できるというわけ.これに他ならない.From み
・不均一核生成が生じている根拠は,実際に多くの析出が粒界から生じている.第二に,電子顕微鏡内で温度を上げた状態から温度を下げて過飽和状態を得,そこから時効をさせる.それを繰り返したりすると,同じ場所に析出相が生成することが珍しくない.
析出物の形態と構造の変化 †
析出物の外形 †
・たとえばAl-Cu系のGPゾーンの第一弾であるGP-1はCu原子が{100}面に1枚の板状に集合したものである.その断面図を5.9図に示す.Cu原子はAlよりも小さいために,周辺のAl格子はひずみを生じ,第10章の転位論でしめしたような刃状転位ループと同様な状況になっている.このときのひずみエネルギーは10.39式を応用すると,
Es=G(Da-Dc)pow2/2(1-v)/Rlog(R/ro)
GはAlの剛性率,(Da-Dc)はAlとCu原子直径の差,vはポアンソン比,Rは板状集合体の半径.Dの差が大きい場合には球や塊状になるよりも板状になったほうがいい.
・このようなひずみエネルギーは,5.7式(つまり,ベッカーの核生成エネルギーの式)に組み込まれるべきである.一般的に,原子の大きさが著しく異なる場合や金属中の炭素,窒素,水素原子の集合析出の場合には,広がった分布のために体積エネルギーや界面エネルギーが増加する不利をこえて,転位型のひずみエネルギーが有利になるので5.5図のような板状析出形態がよくみられる.
・析出相がある程度大きくなると,母相と析出相との格子定数比の差から生じるミスフィットが大きくなってくる.これを緩和するために,一格子面分のずれが導入され,それをミスフィット転位とよぶ.また,ミスフィット転位が入った界面を半整合界面と呼ぶ.ミスフィット転位の間隔は
d=ab/(ab-ap)
これは結晶が球状でも成り立つ.
1-5 析出物の構造変化 †
・大事なのは析出するのに必要な元素量をちゃんと考えること.
析出の成長過程 †
・析出核ができれば母相内に分散していた析出すべき原子がそこに集まってきて析出物に組み入れられていく.これが核生成の次の成長過程である.
・母相中の濃度が極端に低くなく拡散速度が極端に早くなければ,濃度分布は拡散方程式によって表されるものとほぼ一致するであろう.あるいは,母相との界面での反応が遅ければ,濃度分布はその間に平滑化されて反応は界面律則となろう.一方,界面反応が早くても固溶原子の移動が盛んで無秩序な運動のうちに書くにめぐり合ってそこで取り込まれるならば拡散方程式は不要となり単純な衝突反応過程として扱えるであろう.
なるほど.. 自分があつかう系の核生成ではどちらの方程式にリッソクされるのかを判断する必要があるな.From み
自己触媒反応 †
・反応してできたものが触媒作用のように以後の反応を促進する場合がある.これを自己触媒反応とよび,反応速度は反応しようとしている成分のみならず反応性生物の関数ともなっている.析出の場合,析出物が周りに大きなひずみ場を生じ,それが溶質原子に対して引力となり析出を促進するなら,これは自己触媒的である.
析出相を制御する場合,これは考えないといけないかもしれない.From み
・その場合,速度式は
dy/dt=ky(1-y)
反応速度はy=1/2を境にして対照的である.右辺のyは反応性生物,(1−y)は反応しようとしている成分である.
ジョンソンメールの式 †
・ジョンソンメールは鋼のオーステナイトからパーライトが分離析出する場合の反応がn=4で表されることを見つけた.この反応は最初は徐々に立ち上がり,やがて食い合いの効果が現れ,最後はtnが効いて反応は早く終結するから反応曲線は図5.14のようなシグモイダル型になる.
核生成と成長を含む反応式 †
・自己触媒の式に見られるように反応の初期に核生成の段階があって,それは成長段階とは別に取り扱う必要がある場合があり,また実験的にも析出や相変態の初期に現象がなかなか始まらない時期があって,その期間を核生成に必要な時間,すなわち潜伏期間とよんでいる.
・ある時間における過飽和の溶質原子の単位体積あたりの数をn,析出核の数をmとしよう.溶質原子が析出粒子に集まってくる速度は自分自身の数と相手の粒子の数に比例するであろう.そこで,速度式は,
- dn/dt=Knm
mが一定であれば,これは単純な一次反応式である.析出粒子間のせめぎあいがなけれあば核生成の段階が終わっている後段ではそのようになるであろう.しかし,前段階で核形成が起きようとしているときには,溶質原子は集合してもエンブリオとして離合集散しているだけで析出の中心であるmの出現はおそく,それがリッソク過程となる.大事なのはmが変数であり,その出現の速度は核になろうとしているエンブリオにやってくる溶質原子の量に比例する.
こうゆう考え方での理論式を本研究にも当てはめないといけないな.濃度差があるときにどのような式を構築できるのか?!などなど From み
オストワルド成長 †
・多数表れた析出物は時間がたつにつれて大きなものはますます大きくなり,小さなものはいったん出来上がったにもかかわらず縮小して消えてしまう.
スピノーダル分解 †
・合金からの析出あるいは相分離の過程の中で,今まで述べた核生成によって析出物が出現するのとことなって,広い範囲にわたって溶質原子の濃淡分布が細かく周期的に起こり,それが時間と共に強調され,ついには明白な二相分離にいたる現象.これがスピーノダル分解.
2.析出相形態 †
優先的結晶方位関係 †
一般的に,析出相は母相と何らかの結晶学的な平行関係を有する.たとえば,FCCの最密面111は,BCCの最密面110と平行関係を持つ例が報告されている.この「平行関係を持つ」という言葉は,なれないうちはイメージがつきにくい.たとえて言うなら,析出相と母相はそれぞれXYZで記載される3軸座標を持っており,析出相の座標軸と母相の座標軸はある回転マトリクスをかけることで変換できる状態にある.そして,平行関係とは,析出相内の111面を仮に無限に広げるとしたとき,それは母相の110面と平行になる!というものである.
不変線方向 †
異相界面構造 †
原子マッチング方法 †
弾性論~ †
実験 †
理論 †
3.点欠陥 †
金属中の点欠陥の特徴 †
(金属材料の物理 著:竹中伸ほか)
点欠陥は熱平衡状態で存在する唯一の格子欠陥である.熱平衡状態で点欠陥が存在するのは,自由エネルギーにタイするエントロピーの寄与による.結晶の自由エネルギーFは,内部エネルギーEとエントロピーSにより,
F=E-TS
ここで,Tは絶対温度.欠陥が入ると原子構造の秩序が減少するのでエントロピーは増加する.その増加率は濃度が小さい内は大きく,濃度の増加とともに減少する.エントロピーの変化は,原子の配置の自由度の変化に由来する配置エントロピーΔScと,振動エネルギーの分配のしかたに由来する振動エントロピーΔSfからなる.今,N個の格子点からなる結晶にn個の原子空孔が導入されたとする.配置エントロピーは,n個の原子空孔の配置のしかたの数Wの対数にボルツマン定数kB乗じたモノである.すなわち,
ΔSc=kB ln W = kB ln N!/(N-n)!n!)
振動エントロピーの変化は,原子空孔の周辺では原子の結合が弱まるために,振動数が減少することによって生じる.原子の振動にアインシュタイン近似を適用し,原子空孔に近接するz個の原子の固有振動数がvからv’に変化したとすると,原子空孔1個あたりのエントロピー増加量ΔSfは,
ΔSf=3 z kB ln v/v'
形成エネルギーと熱平衡濃度 †
原子空孔の形成エネルギーは,完全結晶の中から原子を1つ抜き出してそれを結晶表面につけたときの正味のエネルギー変化に相当する.
へー そうやるんだ.かなり大胆な前提だな.果たして,温度に依存した原子空孔濃度を見積もる式は作れるか? From み
原子空孔濃度や原子空孔形成エネルギーEfを求める方法は,大きく分けて二つある.(1)熱平衡状態での物性値をその温度で測定する方法,(2)熱平衡状態から急冷して原子空孔を凍結し,その凍結量を物性値の測定から見積もる方法.
点欠陥の役割 †
点欠陥の生成や消滅は結晶中の不完全な部分で生じる.点欠陥のもっとも一般的なソースは,粒界,表面,および刃状転位である.
お!やはり表面から原子空孔ができる!ということは,あの瞬間加熱法でおそらくそれが起こっているに違いない.From み
金属中の点欠陥は熱的に生成されるものだけではない.塑性変形と高エネルギー粒子照射は,点欠陥を結晶中に過剰に導入する2つの主要な手段である.塑性変形中にらせん転位どうしが斬り合うと,必ず点欠陥が形成される.また,高エネルギー粒子(電子,イオン,中性子)が結晶中の原子をはじきとばして点欠陥を形成する.このような手段で導入される欠陥が熱的に生成される欠陥と異なる点は,後者の場合には形成エネルギーの小さい特定の欠陥(金属では原子空孔)以外の欠陥は無視できる量にあるのに対して,塑性変形や照射ではエネルギーの大きな点欠陥も形成させるという点である.
間違いなく,点欠陥,すなわち原子空孔が増えると,核生成数は増える.しかし,その式はない.そうか..この点欠陥ってやつは本当に古くから研究があり,金属物理屋の長年の興味対象にあったわけだ.その未解決問題の中に,「点欠陥と核生成」があるわけだ.このあたりで調査するとどうやらシュミレーションでの研究が目立つ.確かに実験ではできないわけだ From み
(これより以下,金属便覧を参考にした)
熱平衡にある点欠陥 †
熱平衡濃度 †
ある一種類の点欠陥を結晶中に1個つくるのに必要な自由エネルギーをGfとし,その点欠陥相互の間に相互作用がないものとすれば,温度Tで結晶中に存在する点欠陥の濃度cは次の式で表される
c=q exp(-Df/kT)
qは格子点1個あたりその点欠陥をつくることのできる場所の数.たとえば,原子が1個正規の格子位置から抜けたモノを空孔というが,この場合はq=1である.格子間原子の場合には同等な格子間位置が単位胞のなかに何個あり,単位胞に何個の格子点が含まれているかによる.
ついにみつかった,ある温度での点欠陥の濃度の式.意外にシンプルだった.FCCの場合のqは,いくつだろうか? From み
点欠陥の集合体 †
多くの場合,同種の点欠陥の間には結合エネルギーが存在すると考えられる.すなわち,2個の空孔がばらばらに存在するよりは結合した方がエネルギーが低くなると考えられる.
そう考えると,NiとFeの界面に析出相が生成する理由は,Niの濃度と,空孔が界面に集まることによる核生成サイトの偏り現象の2つが考えられるな! この関係を式にして,理論的に見積もることはできないだろうか?★ From み
熱平衡にない点欠陥 †
急冷 †
高温での熱平衡濃度は,たとえば面心立方,細密六法,体心立方などの金属では,空孔が10のー5〜ー4乗,格子間原子は10のー10乗程度である.従って,十分急速に温度を下げてやれば,これらの点欠陥はほぼそのままの濃度で低温に凍結される.十分低温では点欠陥はほとんど動かないから,これで過飽和の点欠陥濃度が実現されたことになる.
急冷のほかに,加工,照射による空孔導入方法が書いてあるが,もう一つ,急加熱というのがあった! From み
急加熱 †
上記の3つの方法は過飽和の点欠陥を作る方法であるが,急冷の逆過程として吸熱によって未飽和濃度の空孔を作ることができるはずである.しかし,未飽和度を検出するは平行濃度がかなり大きくなければならず,したがって,融点近くのかなり高温まで急加熱しなければならない.
もしかしてあの瞬間加熱は,加熱速度に理由がるのか?! 30分かけてあの温度にあげて急冷した場合と比較する必要があるかもしれない!★ From み
4.その他 †
組成傾斜時効法による核生成サイズの実験的検証:宮崎,小林先生 †
5.応用事例 †
すぐに思いつくのは,時効硬化を利用した強度向上だね.それ以外では,磁石? From み
ぶっちゃけ,析出相の制御っていう研究はほとんどないよね.でも,もっと広義で考えればあるかも知れない.調査の必要有り From み
今ある疑問 for 立命 †
・どんなときに相晶対になって,どんなときに一つの析出相になるのか?
・本当に棒状なのか?いったい,析出相はどんな長さなのか?
・相晶の方位のずれと,母相と析出相の方位のずれとは,どちらがどれだけ大きいか?それともその差にいみは無いか?
・時効温度でどのくらいの格子常数比が変わるか?
・どんな時効温度のときにどんな析出相になるのか?相晶対は特別なのか?普通なのか?
・先に一つの析出相がてきで,そのあと,別の析出相ができるのか?
・その時間スケールはどういうオーダーなのか?核生成の直後に対ができるから,そのあとの析出相のサイズに違いがないのか?
・いったい,どんな析出相が「標準系」なのか?あるいは,その標準系を求めることそのものが間違いなのか?
・結晶粒界での核生成と,相晶の核生成とのモチベーションはどちらが大きいか?優先順位,定量評価は可能か?
・なぜ,相晶対が2,3,4つと続かないのか?粒界析出のように!
・古典的な界面エネルギー,弾性エネルギーのつりあい議論にしたがって,議論することはできるか?
・シンパシフィック核生成の論文はあるか?日本語では共鳴核生成
・他の合金では相晶対はできるのか?
・核生成サイトに順位付けはできるか?そして,それぞれの条件下を実験で再現できるか?(成分差,温度差)
・元素拡散は考慮する必要はあるか?
(京大用の「今ある疑問」は,会員用研究ネタのページにて)